「お迎え現象」は本当? – 学術的な研究調査が存在

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お迎え

死の間際に亡くなった人が枕元に立つという「お迎え現象」。
この現象について、学術的な研究調査がありますのでご紹介します。

「お迎え現象」については、学術的な研究調査が存在

「亡くなる5日前に、母が『お友達がさっき来たでしょ』と言うんです。『えっ、来たの?』と聞くと、『うん、さっき来たよ』って。そのお友達は7年前に亡くなっているんです。私はギョッとしましたが、あまりに幸せそうに話をするの。4年前にがんが見つかって以来、まだ死にたくないと言い続けた母ですが、心が落ち着いたのか穏やかに逝きました。私も母のように死にたいです」

このような、死の間際に亡くなった人が枕元に立ったという「お迎え現象」については、医師と社会学者らによる学術的な研究調査があります。

宮城県で在宅ケアの医療法人「爽秋会(そうしゅうかい)」を主宰(しゅさい)していた医師の岡部健(おかべ たけし)さんは、死期が近づくと「お迎えが来た」という患者があまりに多いことに驚きました。
そして、そうした人々の多くが、死の恐怖が和らいで、穏やかに旅立っていることに注目しました。

「お迎え現象」は、医療や介護の現場ではよく知られるもので、医学的には「せん妄」と診断され、脳への酸素不足や全身の衰弱から来る幻覚(げんかく)や妄想(もうそう)として今まで片づけられてきました。
しかしながら、岡部さんは「この現象を科学的に解明したり否定したりするのではなく、安らかに旅立つ死へのプロセスと考え、まず実態を調べるべきだ」と考えました。

そして、2007年、仲間の医師や母校の東北大学の社会学者らと一緒に、これまで看取った700人近くの患者の遺族にアンケート調査を行ないました。
その結果、366人の遺族から回答が寄せられ、そのうち42.3%が「亡くなる前に『お迎え現象』があった」と回答しました。

それによると、「お迎え現象」が起こるのは自宅にいる場合が87.1%と圧倒的に多く、また「お迎え」が来てから1~2週間以内に旅立つ人がほとんどでした。
そして、「お迎え」が来ても「怖い」と思う人は少なく、「お迎え」後の故人の様子を尋ねると、「普段どおりだった」「落ち着いたようだった」「安心したようだった」などの肯定的な回答が45.8%で、「不安そうだった」「悲しそうだった」などの否定的な回答36.8%を上回っていました。

また、「お迎え」に来た相手は、「既に亡くなっている家族や友人」が52.9%と多く、飼っていたイヌやネコが現れるケースもありました。
そして、「お迎え」が来た人の約9割が、穏やかに旅立ったようだったといいます。

研究調査における、具体的な「お迎え現象」の事例

同論文には、以下のような具体的な事例が紹介されています。

【事例1:故人89歳男性・回答者63歳娘】
父が「部屋のすみにだれかいる」と言うので、「だれ?」と聞くと、「母ちゃんだ」と答え、「(母らしき相手と)迎えに来たのか?」と会話していました。亡くなる1か月くらい前です。

【事例2:故人55歳男性・回答者52歳妻】
夫はこう話していました。「あと2、3日で(自分の命は)どっちに転ぶんだろう? 親父が夢の中に出てきた。あの世で親父に会えるかと思うと楽しみだ。今までは死ぬのが怖いと思っていたけど…」

【事例3:故人78歳男性・回答者52歳息子】
父が、お迎えが来たようなことを言うので、私が「亡くなった母が迎えに来るまでは行かないように」と言うと、うなずいていました。だから、父が亡くなった時は、母が迎えに来たものと思っています。

【事例4:故人93歳女性・回答者年齢不記載・息子の妻】
義母に幻覚が現れたのは、亡くなる1か月くらい前です。家族が「だれかいるの?」と聞くと、「男の人」「女の人」と具体的な名前は言わず、一瞬ニコニコしていました。「お爺ちゃんが来たの?」と聞くと、「いなくなった」と答えました。しばらく穏やかな幻覚が続きました。ある時など、「お婆ちゃん、お爺ちゃんだったら一緒にお茶を飲みましょうか?」と声かけして2人で笑ったこともありました。

【事例5:故人79歳女性・回答者55歳息子】
母の認知症が進行していたし、幻視・幻聴が起こっていたので、会話を成立させることがほとんどできない状態だった。そんな状態でも母の表情がハッキリ変化するので、何か素晴らしい情景を見ている事は判断できた。とても素晴らしい輝きのある表情だった。

「お迎え現象」の中に、患者の全人生が集約されている

このように、体験談の多くは、看取る側、看取られる側の双方にのどかな雰囲気が漂い、患者たちが夢見がちに旅立った様子が伺えます。
岡部さんらは、論文の中で、「お迎え体験が、真実かどうか、どう解釈するかは別次元の問題として、患者や家族に苦痛を与えていないことが確かめられた。お迎えの中に患者の全人生が集約されている。『せん妄』と排除(はいじょ)せずに、看取る側が、死に近づいた人の気持ちと寄り添う大切な方法だから尊重すべきだ」と強調しています。

2025年には、団塊世代が70代後半となり、現在年間約120万人の死者が約160万人以上になる多死社会を迎えます。
そうなると、「お迎え現象」がいっそう身近なものになりそうですが、この現象をいずれわが身にも起こりうる出来事と受け止め、あたたかく受け止めたいものです。

参考にしたサイト
死の間際に「お迎え」が来るって、ホント? : J-CASTヘルスケア
http://www.j-cast.com/healthcare/2016/03/01259983.html?p=all

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