「マクドナルド・コーヒー事件」の真相は? – お婆さんが賠償金で大金持ちになったというのはウソだった

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McDonald's

「マクドナルド・コーヒー事件」とは、アメリカのニューメキシコ州のマクドナルドで、ステラ・リーベック(Stella Liebeck、1912年 – 2004年)さんがドライブ・スルーで購入したホットコーヒーを膝(ひざ)の上にこぼしてしまい、やけどを負ったという事件と、その事件をめぐる裁判のことです。

この事件は、「お婆さんがマクドナルドで買ったコーヒーをこぼしてやけどを負い、訴訟を起こした結果、数億円の賠償金を得て大金持ちになった」と一般的に認知されているようです。
しかしながら、事実はまったく異なるようです。

「マクドナルド・コーヒー事件」の発端

1992年の2月、当時79歳であったステラさんは、ニューメキシコ州のマクドナルドのドライブ・スルーで孫と一緒に朝食を購入しました。

Stella Liebeck

マクドナルドの駐車場に自動車を止めて、車内で買ったばかりの朝食を食べることにしたステラさんは、車内にコーヒーを置く場所がなかったため、コーヒーを膝の間に挟み、ミルクとシュガーを入れるためにコーヒーの蓋(ふた)を開けようとしました。

とそのとき、誤ってカップが傾いてしまい、コーヒーがすべてステラさんの膝にこぼれてしまいました。
そのコーヒーは、ステラさんの着ていた服に染み込み、ステラさんはコーヒーの熱さに叫び声を上げて車外に飛び出しました。

運転していた孫は、最初はただコーヒーをこぼしただけだと思っていましたが、徐々にただ事ではないことに気づき、服を脱がせるなどの応急処置をしたのちに、ステラさんを近くの病院へ運びました。

ステラさんのけがの状態は思っていたよりもひどく、やけどの面積は体の16%に及び、そのうち6%が、やけどの中でも最も重い第3度の火傷であると診断されました。
そして、ステラさんは治療のために1週間入院することになります。

治療費は、1万ドル(約100万円)にものぼり、治療が終わっても傷は完全には癒(い)えず、ステラさんの足にはやけどの痕(あと)が残ったそうです。

やけどに苦しんだステラさんは、マクドナルドに「治療費の返還(へんかん)」と「ホットコーヒーの温度の再確認」を求める文書を送ります。

しかしながら、ステラさんの娘であるジュディ・アレンさんによれば、マクドナルドの返答は「800ドル(約8万円)を支払う」だけだったとのこと。

この対応に失望したステラさんは、ケン・ワグナー弁護士に相談して、マクドナルドを相手取り裁判を起こすことにしました。

マクドナルドの対応に失望したステラさんはマクドナルドを提訴

ケン弁護士は、「ステラさんから依頼を受けた後、マクドナルドに行ってホットコーヒーを買いました。ホットコーヒーはかなり熱く、危険と言っても過言ではなかったと思います」と当時の様子を語っています。

ステラさんは、「私はマクドナルドにホットコーヒーの温度を下げて欲しかったのです。私のように苦しい思いを他の人に経験してもらいたくなかっただけなんです」と裁判を起こした理由を説明。

マクドナルドの方針では、「提供するホットコーヒーは約82~88℃)」とされています。家庭で作るホットコーヒーは約77℃であり、マクドナルドのホットコーヒーは一般的なものよりも少し熱かったのです。
専門家が調査したところ、82℃のお湯を皮膚にこぼしてしまうと、約15秒以内に第3度の火傷になってしまうことが分かりました。

また、裁判では、ステラさんと同様の苦情が、過去10年間に700件あったことを示す文書を提出しました。

原告の訴えに対し、マクドナルドは「やけどの苦情は約240万回に1回程度で、統計的にみればかなりまれなケースであるため、ホットコーヒーの温度を下げる必要性は見当たらない」と反論しました。
そしてさらに、マクドナルドのコーヒーは他のファストフードショップと比べても特別熱くない、とも主張しました。

マクドナルドの弁護士によれば、マクドナルドのコーヒー評価書には、お客さんの評価として「マクドナルドのホットコーヒーは、とても熱いけど、それがいいんです」と書かれており、ホットコーヒーの温度も、適切な基準に基づいて設定されていたとのこと。

当初、マクドナルド側はステラさんの主張に対して一歩も引く姿勢をみせず、裁判の行方は分かりませんでしたが、原告側がステラさんの痛々しいやけどの写真を公開したことで、裁判の流れは一気にステラさんに有利な展開となります。

そして、陪審員による評議の結果、マクドナルドに80%、自分でホットコーヒーをこぼしたとしてステラさんに20%の過失があるとされました。
その上で、マクドナルドに填補賠償認定額20万ドル(約2000万円)の80%に当たる16万ドル(約1600万円)を本来の填補賠償額としてステラさんへの支払いを命じました。

さらに、マクドナルドのコーヒー売り上げ高の2日間分に相当する270万ドル(約2億7000万円)を懲罰的損害賠償額としてステラさんに支払う判決が下されました。

裁判には勝ったがマスコミの過剰な報道でステラさんは悪者に

2700000$

このニュースは、アメリカ内にとどまらず、世界中に広がっていきました。
その損害賠償額の大きさから、大々的に報道されましたが、事の経緯を細かく報道するメディアはほとんどなく、テレビのニュース番組では、「運転中に膝の間にホットコーヒーを挟んでいて、こぼしてしまった」と事実と少し違った内容で伝えられました。

アレンさんは、「メディアの過剰な報道によって、母の印象はとても悪くなってしまいました。まるでメディアが母をいじめているかのように感じました」と当時の思いを語っています。

そして、ステラさんの名は「コーヒーをこぼして大金をせしめた人」として知れわたり、報道番組だけではなく、コメディ番組でもネタとして扱われるようになってしまいます。

しかしながら、最終的に双方の間に和解が成立し、マクドナルドは50万ドル以下(約5000万円)の和解金をステラさんに支払っただけで、ステラさんが数億円の賠償金を受け取ったという事実はありません。

参考にしたサイト
コーヒーをこぼして多額の賠償金を得た「マクドナルド・コーヒー事件」の真実 – GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20131025-truth-of-stella-liebeck-vs-mcdonalds/

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