一見、普通の通勤電車にしか見えませんが、行く先を知らせる方向幕を見ると、「鮮魚」の文字が。
近畿日本鉄道には、時刻表には掲載されていない、そんな列車が存在します。
鮮魚列車
写真はこちらからお借りしました。
この列車の正体は、三重県の漁港で仕入れた新鮮な海の幸を、奈良や大阪へ運ぶための通称「鮮魚列車」。
1963年(昭和38年)9月21日に、伊勢志摩漁行商組合連合会の貸切り車両として運行が開始されました。
「鮮魚列車」が作られたそもそもの発端は、魚を通常の列車に持ち込むと、車両内に魚臭が立ちこめ、他の乗客の迷惑となるためです。
そこで考案されたのが、魚を運ぶ専用の「鮮魚列車」。
魚介類行商人用の列車です。
鮮魚列車は、伊勢志摩魚行商組合連合会の会員たちが、お金を出し合って運行している貸切列車。
そのため、一般のお客は乗ることができません。
車内には、関係者以外を除いてほとんど乗客は乗っておらず、広告やつり革が一切ありません。
新鮮な魚介類(ぎょかいるい)の入った発砲スチロールや段ボールなどが積み重ねられています。
魚介類は当初、「カン」と呼ばれるブリキの箱に入れることになっていました。
これは、連合会の規約で、車内を汚さないようにすることが規定されているためです。
しかしながら、現在では発砲スチロールが使われるようになっています。
この列車は、早朝に宇治山田駅を出発し、約2時間半をかけて大阪に到着します。
中には、朝は鮮魚列車よりも早い時間に運行される始発列車を乗り継ぎ、伊勢地方から大阪へ向かう会員もいます。
鮮魚列車は、最盛期には200人を越える利用者がいましたが、最近では半数以下になっています。
自動車利用の増加や行商人の高齢化、そして後継者不足などのためです。
が、現在でも、地域の足として日曜・祝日を除く平日に1日1往復、運行されています。