石けんは、今でこそ手を洗うときに使うものですが、昔は、なんと、薬として使われていたことをご存じですか?
石けんはもともと高価で、薬として使われていた
江戸時代には、石けんは既に一般家庭でも使われていました。
しかしながらこの石けんは、あくを小麦粉で固めた代物(しろもの)で、まんじゅうを膨(ふく)らませるときにも使われるものでした。
現在使われている石けんの方は、「しゃぼん」と呼ばれていました。
が、この石けんは舶来(はくらい)ものとして珍重(ちんちょう)され、とてもとても一般庶民の手に届くようなものではありませんでした。
そしてこの「しゃぼん」は、洗剤というよりも薬として使われており、座薬(ざやく)として便秘に、飲み薬としてして黄疸(おうだん)、結石、胃痛などに用いられていたようです。
石けんが日本に伝わったのはいつ?
このしゃぼんが日本に伝わったのは意外に古く、奈良時代と考えられています。
慶弔(けいちょう)17年(1612年)に、東大寺の宝の中に、「しゃぼん、一長持(ながもち)」と書かれているものが見つかっています。
長持とは、移動させるのに2人がかりという、大きな木製の箱のことです。
その箱がいっぱいになるほど、たくさんの「しゃぼん」を集めていたということでしょうか。
もっとも、これは蜜蝋(みつろう、=ハチの巣の成分)を指していたという説もあるようです。
が、「しゃぼん」という言葉が奈良時代に日本に入ってきた可能性は高いようです。
紀元前2000年頃のエジプトでは、現在と同じように、ソーダに油脂(ゆし)を混ぜる方法で石けんが作られていたということなので、もしも石けんが奈良時代に日本に伝わっていたとしても、それほど不思議ではないのです。