毎年、有名大学の大学生の就職のシーズンになると、一流企業ではあの手この手で優秀な大学生にアプローチを開始します。
そんなとき、企業の尖兵(せんぺい)として最初の勧誘役になるのが、入社してまもない新人たちです。
何故、中堅社員やベテランではなく、新人なのかについては、学生たちと気軽に接触できるし、学生たちもざっくばらんに話せるからといわれています。
がしかし、この新入社員獲得作戦には、実はもうひとつ大きな目的があります。
それは、愛社精神をうえつけることなのです。
というのも、人間は、たとえ自分とは違う考えであっても、その考えを第三者に説明しているうちに、次第にその考え方に染まっていくからです。
大学生を勧誘する場合、自分の会社がいかにいい会社かであるか、学生に説明しなければなりません。
本音の部分では、会社に批判的(ひはんてき)な意見をもっていたとしても、立場上、長所ばかりを強調せざるを得ません。
すると、いつしか批判的な意見は消えてなくなり、本当に自分の会社はいい会社なのだと思うようになるのです。
もちろん、もともと批判的な意見をもっていない新人は、大学生に説明しているうちに、ますます愛社精神が強まることになるという寸法です。
入社してまもない頃は、まだ気持ちがうわついていて、この会社に骨を埋めようなどとはなかなか思わないものですが、新入社員獲得作戦が終わる頃には、彼らは立派な「会社人間」になっているというわけです。