「トントン!」と、指で患者の胸を叩く診療法を「打診(だしん)」といいます。
これは一体、どのようなきっかけで生まれたものなのでしょうか?
また、これで本当に症状が分かるのでしょうか?
「打診」は、酒屋のおやじが酒樽をカンカン叩いているのを見て生まれた
打診は、18世紀の半ば頃、オランダのアウエンブルッガー(Joseph Leopold Auenbrugger、1722‐1809)医師が、酒場のおやじが酒樽(さかだる)をカンカン叩いて酒の残量を調べているのを見て考えついた方法だといわれています。
そして、これが内科の診断法として伝えられ、今でも打診は診察の第一歩とされています。
「打診」は、一体何を調べている?
それでは、この打診では、一体何を調べているのでしょうか?
打診では、指で患者の胸をトントン叩きますが、叩く位置は、肺とその上部で、感触ではなく、音を聞くために行なっています。
健康であれば、肺の内部には空気が入っています。
音でその空気の具合を聞き取って、異常の有無を判断しているのだそうで、”経験豊富な医師ならば、肋膜炎(ろくまくえん)や心臓肥大などはこれですぐに分かる”そうです。
叩き方は、当時は指で胸を直接叩くやり方でしたが、現在では、指をあてて、さらにその上を指で叩く「指・指打診法」という手法となり、医師の間で広く行なわれています。
打診で、本当に症状が分かる?
しかしながら、打診で症状が分かるといっても、それはあくまでも経験豊富な医師の場合です。
むしろ、打診だけで診断できる人は”まれ”です。
そのため、現在は打診のあとに必ず、レントゲンや血液検査などの科学的な診断をしているということです。