競馬の八百長事件といっても、これは推理小説の中の話です。
しかしながら、この推理小説は、元女王陛下(へいか)のお抱え騎士だったイギリスの名手・ディック・フランシスが書いたものだけに、そのリアリティーは十分です。
ディック・フランシスの小説に登場する意表を突くトリック
ディック・フランシスの小説には、たいてい競馬界の裏側が描かれていますが、”音”のトリックが登場するのは、日本でのデビュー作となった「興奮」です。
障害レースで、大穴が続出します。
が、大穴をあけた馬をいくら調べても、興奮剤(こうふんざい)などを投与した形跡はありません。
それでは、どうして勝てたのか?
それは、以下のようなトリックが使われたためでした。
(未読の方は、ここから先は読まなくてもけっこうです)
あらかじめ、馬に犬笛(いぬぶえ)を聞かせ、同時に火炎放射器(かえんほうしゃき)で火を吹きつけます。
すると、馬は恐怖のあまり、ものすごいスピードで疾走(しっそう)します。
これを何回か繰り返すと、馬は犬笛を聞いただけで、パニックに陥(おちい)ったように駆け出すようになります。
そうしたら、あとは実際のレースで、最後の追い込みのときに、犬笛を吹くだけです。
すると、馬は猛スピードで疾走し、たちまち1位になるというわけです。
ポイントは、この犬笛の出す音が非常に高い周波数であるため、人間の耳にはほとんど聞こえないところにあります。