「人間は考える葦(あし)である」といったのは17世紀の哲学者・パスカル(Blaise Pascal, 1623年-1662年)ですが、人間以外の動物が何も考えていないというわけではありません。
にもかかわらず、人間だけが文明をもっているのは、「人間には物事を抽象化(ちゅうしょうか)する力があるため」といわれています。
人間よりも猿の方が、木の実を採(と)ることに関しては上手ですが、自分で採った木の実を数えることはできません。
というのは、「数」は抽象的な概念(がいねん)だからです。
物事を抽象的に捉えることができるかどうか、これが人間とほかの動物の決定的な違いなのです。
学者犬は、本当に計算ができる?
さて、そこで問題となるのが、「学者犬(がくしゃいぬ)」の存在です。
学者犬とは、たまにテレビにも登場する計算のできる犬のことです。
犬には、数は数えられないはずで、数が数えられなければ、計算ができるわけがありません。
ところが、学者犬は計算ができるというのです。
これはいったい、どういうことなのでしょうか?
もちろん、これにはトリックがあります。
確かに、学者犬に「1+2」とか「2x5」といった計算を見せると、その答えの数字の書かれたカードをもってきます。
が、これは学者犬が計算しているのではありません。計算しているのはパートナーの人間なのです。
学者犬は、パートナーの表情やサインを見て、どのカードが「正解」のカードなのかを判断しているのです。
学者犬のパフォーマンスを見ていると、カードを選ぶ際、チラリチラリとパートナーの方を見ていることが分かるはずです。
学者犬は、パートナーからそれとなく送られるサインを確認しているのです。
ともあれ、そういったサインを理解できる学者犬の頭が良いことは確かです。
しかし、それでは計算ができるのかというと、これは別問題。やはり、犬には計算はできないのです。
それでも、人間が犬を仕込めば、このような芸当ができるということは驚きです。